『先生の葬儀』
 小学校の時の恩師の葬儀。控え室で弔文を読みあげる練習をしている龍之介。年は違うが、同じ先生に教わった幼なじみの真由実がやってくる。先生はその昔言った。がんばれって言うな、みんながんばっているんだから。変わり者の先生だったが、今にして思うと、今、必要な処世術を教えてくれていたことに気づく二人。

 以前からずっと「変わり者の先生」をやりたいと思っていたんです。嘘を教える先生とか、本当のことを教えてしまうために、子供達が大混乱になってしまう先生とか、そういった人をね。本当のことを言ったために大混乱になるというのは、つまり「教室では1足す1は2だが、世の中では3の時もあるし、5が正解の時もある。0になる時だってある」なんてことなんですけどね。勉強を教えるのではなく、もっと処世術や、悲しみに耐える方法、人生についての考え方、割り切り方なんかを教えてくれる先生がいいなあ、と思っていました。でも、その先生を役者にやらせてしまうと嘘になってしまうし、その役者のキャラクターに依存してしまい、本当にやりたい「変わった先生」像がボケてしまいます。ですから、亡くなった先生をいろいろな断片で語り、その断片から一人の変わった先生像が立ち上がってくれば、と思ったわけです。それともう一つ。子供が三人いて、そのうちの二人がホモセクシャルだったら、残った一人はマイノリティだよな。というのをやってみたかったのです。マイノリティというのは数の問題で、それはいつでも数において逆転が可能なんです。その時、なにが起きるのか? マイノリティが抱えていた問題を、今度は持たない者が、なぜそういった悩みを自分が持っていないのだろうという悩みを抱える。そういった、まったく違った角度からのアプローチも可能になるはずだと思ったのです。